・今回の修理品 パテック・フィリップ 5014
・修理依頼 すぐに時計が止まってしまう。
ゼンマイを巻いても時計が止まってしまうとの事でした。
お預かりの際、リューズを巻いてみると、巻き止まりがなくゼンマイが切れていると判断しましたが、
実際にゼンマイが入る香箱からゼンマイを取り出して見てみると、
以前修理したお店では、ゼンマイ切れ修理の際に香箱にゼンマイをひっかける部分を加工をするだけの修理をしていました。
手巻きの時計でゼンマイのひっかけの部分が切れてしまうのは良くある事です。
専用のゼンマイがあれば交換すれば済むことですが、無かった場合は幅、厚みが合っていて長さの長いゼンマイをカットし、ひっかけの部分を作ります。
しかし、今回の加工の仕方はいかがなものかと思います。
切れたゼンマイの端をただ折り曲げただけです。
切れたゼンマイを折り曲げているのですから、当然長さは短くなり持続時間に影響します。
ニバフレックス素材のゼンマイは熱処理をしており、そのまま曲げれば折れてしまうので、
折り曲げる為に火をかけて柔らかくしてしまっています。
加工したひっかけの部分も最初は閉じていたので巻き止まりはあったと思いますが、
使用している内に開き、巻き止まりの機能を果たさなくなったのでしょう。
まだ機能を果たしているなら百歩譲ってよしとしますが、しかし最高級時計パテック・フィリップです。
この修理で納得できるお客さんはいるのでしょうか?
高級時計は技術者以外に見られることのないパーツも一つ一つ綺麗に仕上げられています。
やはり、それに見合った修理の仕方があると思います。
・今回の修理料金 OH 52000円、ゼンマイ交換 8000円
※修理料金は状態、形状、素材、本数で料金が変わります。