機械式腕時計の魅力

機械式時計は18~19世紀に小型化が進み、置き時計などを経て、懐中時計の時代となります。そして、諸説ありますが19世紀後半、簡単に持ち運ぶことができる時計に改良されたのが、腕時計の始まりと言われています。1960年代にクオーツ式時計が開発されるまで、時計はすべて機械式時計でした。

機械式時計とは、ゼンマイを動力として、複雑に連動する歯車によって動く時計のことです。電池交換の必要はありませんが、ゼンマイを巻かなくてはなりません。ゼンマイを巻く方法は、手で巻く『手巻き』と、人の動きを利用して巻く『自動巻き』の2種類があります。
それに対して電池式時計は、水晶に電圧をかけることによって起こる振動や回路など電子部品にて時間を計測し、電池の力で動きます。そのため数年に一度電池交換が必要です。

現在、流通している時計のほとんどは電池式のものです。精度が高く、値段も安く、メンテナンスもほぼ不要なため、瞬く間に普及しました。それにより大きく変わったことは、その時々の流行に合わせて付け替え、壊れたら買い換えるという時計の使い捨て時代へ移ったことです。その構造の為にクオーツ時計は、どんなに高価なものでも、人の手で作る事の出来ない電子部品の在庫がなくなれば修理不能となり、必ず動かせない時がきてしまうので、買い換えるのは仕方ないことと言えます。

一方で一生使い続けることのできる機械式時計の魅力が再認識されてきました。
機械式時計の魅力の一つは、熟練職人が一個一個パーツを磨き、何百年と途切れることなく受け継がれた伝統の中で完成された機能美を実感できることです。ムーブメントが見えない中でも秘められた伝統がそこにあります。また、機械の見れる裏ブタの時計なら、魂の込められたパーツたちが時を刻むムーブメントの出す味わいある美しさに酔いしれることもできます。そして、最大の魅力は、自分が歴史の延長線上にいるという事を身近に感じられ、さらに大切に使う事により子や孫などの世代や、想いを継いで永く愛されてゆくことができるところではないでしょうか。

200年も前の発明が脈々と受け継がれ、現代において電気をも使わない機械仕掛けの製品というのは、決して多くありません。長い年月を経た時計は、たずさわった人々の温もりや優しさであふれています。今や単なる時間を知るだけの道具の枠を超えて、人生にずっと寄り添ってくれるパートナーと言えるのではないでしょうか。

永久カレンダー

うるう年の調整なども自動的にでき、非常に長い期間、カレンダーを修正する必要のない複雑機構。パーペチュアルカレンダーとも呼ばれています。現在発売されている永久カレンダーのほとんどは、2100年まで修正する必要がありません。

トゥールビヨン

ひげゼンマイが重力の影響を受けて、正確な振動を保てなくなるのを解消するための機構。脱進機および調速機を2番機にのせて、全体を一定の速度で回転させ、重力を均等化させる仕組みです。

リピーター

指針が表示した時刻を再び音を鳴らして知らせる機構なので、「リピーター=2度打ち時計」と呼ばれています。「時単位」「15分単位」「分単位」という3種類の音で、鳴らす操作をした直前の時刻を音で知らせてくれます。例えば、「2時17分」に操作をしたなら、「時単位」を表す音が2回、次に「15分単位」を表す音が1回、さらに「分単位」を表す音が2回鳴ります。澄んだ美しい音色が魅力です。