Vol.4 日本の修理技術はけしてスイスに負けていません

前回、スイス送りの修理を日本国内修理にしませんか、とお話ししましたが、皆さんどう思いますか。特に営業の方、また輸入代理店の社長様、この件でどのような考えをお持ちでしょうか。考えてみてください、好きで購入した時計が4ヵ月も6ヵ月も手から離れてスイスに送られるのですよ。その間はどうしますか、前に持っていた時計それとも新しい時計を購入しますか。スイス修理が、いかに購入者にいやな思いをさせているとは思いませんか。

スイス修理がいけないと思うのは第2回で話しましたが、長期間かかって出来上がってきた修理品がちゃんと2、3年何事もなく動いてくれるのであればいいのですが、中には2ヵ月、3ヵ月後に不具合が生じることがあります。そうした時、どうしますか。日本で修理が出来ないと、当然またスイスに送り4ヵ月かかるとお客様に説明しますか。スイス本社から裏蓋を開けるなとの指示があるので日本では出来ないとスイスの責任にして説得するのですか。自分たちで修理していないので自分たちの責任ではないと考えているのでしょうか。そのほうが楽なのでしょうか、もしそうだとしたら、購入した時計愛好家ががまんすればいいと思っているのでしょうか。

連載開始(1月1日号)の時に新製品もスイス修理になると話しましたが、このことも皆さん当たり前と思っていませんか。もし日本製の新製品が購入後すぐに不具合が出たら、どう対処しているのでしょう。私は、新製品が発売される前にトレーニングをすれば販売後すぐにも対処できると思うのですがどうでしょうか。私の経験ですが、スイスのあるブランドで、ケースの開け方が分からなかったので問い合わせた時、おもしろい答が返ってきました。今こちらも調べる、3年ぐらいしたら修理が来るだろうからそれまでには、とのことで、笑ってしまいました。絶対の自信があるようで、それまでは不具合は起きないと思っているようでした。

実際には入荷した時点で不良の時計がありますよね。輸入会社の技術者の皆さん、ゴミ、小さなキズ、作動の不良、最悪の場合ネジが外れて止まるなどなど、ですね。スイスからケースは開けるなといわれている時、このような時計はどうするのでしょう。あるブランドではネジ1本外れているだけでスイスに送り返すのです。びっくりです、どうしてこのようなことになるのでしょうか。

双方に信頼関係が出来ていないと私は思います。そう思うのは私だけでしょうか。前にも話しましたが、このままではいけないと思います。もっともっと実技を伴った勉強をして、スイスに対してアピールして、日本の修理技術者の実力を見せてください。長年のスイスとの交流を通じて思うのですが、日本の修理技術はけしてスイスに負けていません。むしろ優れているところがいっぱいあります。そのことをどうアピールしていくかが今後の課題ですね。修理技術者自身もそうですが、その人たちの上に立つ技術の責任者、そして営業、もっといえば経営者の意識がどうなのか。

ちょっと堅い話になってしまいましたが、このことは、この連載の最初から話しています。日本の時計愛好家の方々がこれからちょっと発奮して高額時計を手に入れようと思っている人たちのことを考えると、このままスイス送りの修理が続くのはどうかと思っているのは私だけでしょうか。皆さんの意見をお聞かせください。

次回はケース仕上げについて話したいと思います。