いつの日か蘇る時計たち

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先日、ある一点の時計が送られてきた。
送り主は以前キャンセルで返品したお客様。

キャンセルで返品した後に、やっぱり修理してくださいと再度依頼してくるお客様も時々いる。
それか新たな修理品かと思いつつ、開梱して出てきたのは返品した時計だった。

時計と一緒に同封されていた手紙には、持ち主の亡父が使用していた時計であり、修理費を捻出する事が出来なかった旨が書かれてあった。

また、この時計を部品取りに使えるなら使ってほしいと、使えないなら処分してほしいとも。
たまにではあるが、修理費が予想以上に高く、それなら処分してくださいと言われるお客様がいる。

今回の時計も十分にその時計が買える修理料金であり、決して安くはなく、いくら形見の時計とはいえキャンセルするのも分かる。
形見の時計であれば、動かなくとも手元に置いてもらいたいと思うのだが、利用できるならこの時計もまた誰かの役に立つのではないかと思われるお客様の気持ちも分かる。
そういった感じで、少しずつ集まっていく時計たち。
またいつの日か誰かの時計の中で蘇る日を待っている。

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