ある高級クォーツ時計

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先日、どこの時計屋さんに持って行っても直らないと来られたお客様がいました。
こういうお客様は珍しくありません。
早速その時計を拝見させていただいたところ、スイス製ではありましたが、聞いたことが無いブランドでした。

スイスには数多くのブランドがあるので、これも珍しいことではありません。
なんでも二、三十年前にスイスで購入されたもので、記念に買ったものだからどうしても直したいとの事でした。

お預かり後、お見積もりを出そうと裏蓋を開けて機械を調べていきました。ジャガールクルト製の機械を使ったクォーツ時計でしたが、原因は回路不良です。

錆と漏液による腐食で電子回路が発信していませんでした。
パーツが入手できる時計でしたら、新しい回路に取りかえれば良いことですが、
ジャガールクルト製の機械のパーツはほとんど入手不可ですし、おそらくこのクォーツ機械も既に製造中止のはずです。

回路を入手できる可能性は限りなくありません。
部品入手が無理なら、メーカーに問い合わせてみようと色々探しましたが、どうやら既に無くなっているブランドでした。
もし、ブランドが現存していてもこの位年代の経ったクォーツ時計を直す可能性は限りなく低いのですが・・・これできちんとした形で直せる可能性はなくなりました。

電子部品(コイル、回路)は作る事が出来ないのです。
時々、古いクォーツ時計で機械を他の物に入れ替えて修理?してあるものを見ます。
大概の場合、残念な状態の物がほとんどです。
代替えの機械と文字盤の足位置が合わないために文字盤の足を折って接着剤や両面テープで機械にとめてあったり、機械をケース内に固定する中枠と言うものが段ボールみたいの物で作られていたりと。

確かに時計は動く状態にはなっていて、中を開けないと分からないことなので、お客様は直ったと思うでしょう。
しかし、これを直したとはどうしても思えないのです。
文字盤の足が合わなければ新たな場所に足を付け直す。
中枠が合うのが無かったのだと思うが、埃がでる紙で作るのは問題外で、機械を動かなくすれば良いのだから、何かしら工夫ができたはずです。

代替えの機械がすんなり合うことは少ないです。

色々手をかけなくてはいけない場合が多々あり、料金も高くなります。
いくら思い出の時計でも数千円で買った物が、修理で何万円にもなったら直すのもためらうお客様の気持ちもわかります。
今回の時計は金無垢のブレスレットモデルでした。何百万したものでしょう?
電子部品がない為に真面な修理が出来ないのはどうしたら良いのでしょう。

クォーツ時計の修理の問題点ですね。

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