時計の修理とは? No.3-2

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私の事を少し話します。初めてのブランドでは何も分からずスイスに行くわけですから、トレーナーの言う事を全て丸暗記してくるのです。半年か1年に1回スイスに行くのですが、2度目のときは、その間に修理した内容をレポートにして持っていきます。修理の内容とどう直したかの話し合いをとことんしました。その事が幸いしたのか、最初のトレーナーは若い人でしたが、彼が次に私を見るなり、自分にはもう教えられませんと急に違う場所に移動させられ、そのブランドの生き字引のような白髪の伯父さんに教わる事になりました。工房の責任者で、何を聞いても的確な答えが返ってくるので、楽しく勉強できました。同時に技術者同士で話が通じ、お互いに良い印象を持ち、3回目のスイスからは彼の家まで遊びに行って奥様の手料理をいただくのが恒例になりました。そのブランドを離れてもスイスに行くたび訪れる事にしています。現在はリタイヤされていますが、今でもクリスマスカードや贈り物などで交流が続いています。

この文章は、THE WATCH & JEWELRY TODAY(株式会社 時計美術宝飾新聞社)に2011年1月~11月と2012年3月の12回連載されたものを打ち直したものです。

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