時計の修理とは? No.3-3

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ドイツに行ってトレーニングを受けたときも、違った意味で信頼関係を築けたと思っています。月曜日から金曜日までの5日間のカリキュラムが作ってありました。初めての機械でしたが、注意深く仕事をし、注油(油差し)が終わりチェックしてもらったとき、トレーナーが一言、素晴らしい、私の理想とする油の量と一致した、と言ってくれて一気に会話が弾んだ事を覚えています。その事があったからかどうかは分かりませんが、5日間のトレーニングが3日で終わり、後はホリデーでした。

私が言いたいのは、通り一遍のトレーニングでは信頼関係は築けないと思います。信頼関係ができるとどういう事ができるかというと、トレーニングをまだ受けていなくても、事後承諾でできるのです。これを利用して私は何でも手を付けました。ミニッツリピーター、ツールビヨンなどなど、次に行ったときに、トレーニングは受けていないけれどお客様の要望で直しましたと報告するのですが、一度もやるなとは言われませんでした。それでは、その時計をまず勉強しようと言って始まります。一度日本で経験しているのでスムースに進んでいきます。疑問に思っていた事も分かっているわけですから質問もできます。トレーニングが終わった後、次に来るとき何をやりたいか聞かれるようになれば、うまくいっていると思います。

この文章は、THE WATCH & JEWELRY TODAY(株式会社 時計美術宝飾新聞社)に2011年1月~11月と2012年3月の12回連載されたものを打ち直したものです。

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