時計の修理とは? No.5-5

  • LINEで送る

そういえば、このところ、時計の中古市場が賑わっています。もし時計を購入する時、自分のため、あるいは一生物として購入した時計と、その時その時の好みで買い替えを繰り返す人とはまったく修理の対応が違ってくるのです。ケース仕上げひとつ取っても、一生物として購入されたお客様には私の工房では先ほどの削る話をしてできるだけ最小限にとどめるようにします。お客様でも売り出すので仕上げをと言われれば、新品同様仕上げ(使用した時計は新品にはならないとの思いから、このような言い方をしています)をすることもありますが、これが販売店から仕上げ依頼があったら、よほど深いキズが無い限り頑張ってキズ取りします、再販すると分かっているからです。でもその時計を購入する人が、中古でケースがきれいになっていたら削ってきれいになっていることを分かって購入なり販売なりをして欲しいと思うのは、時計修理の現場でケース仕上げをやりながらそのやり方に疑問を持っている私だけでしょうか。

この文章は、THE WATCH & JEWELRY TODAY(株式会社 時計美術宝飾新聞社)に2011年1月~11月と2012年3月の12回連載されたものを打ち直したものです。

  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。