時計の修理とは? No.6-4

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技術者が少ない時は話し合いで決定できたのですが、技術者が多くなればそうもいきません。また、現在は受け付ける技術者と出来上がった後のチェックをする技術者が違った場合、非常に難しいことになります。仕上げ後のチェックをする人は最初のキズの程度を見ていないから、キズが残っていたら残ったキズを見るため、もう少し取れるのではと思ってしまいます。預かった時計を見ている技術者はよくきれいになったと思っても、最後のチェックの技術者はもう少し取ってとなります。だから技術者の見方で変わることがあるわけです。最終チェックの技術者が変わるたびに仕上げの程度が変わるということになります。それでは会社としては良くないわけです。ですから、どうしてももう少しきれいに、となっていくわけです。もう最初のキズの程度は関係が無くなってくるのです。

先にお話しましたが、現在の若い技術者は白・黒、有る・無しで区別をつけたがる人にとっては、この方が良いのでしょう。何も考えずにキズが有るか無いかで検査すれば良いので楽だと思います。そのほうがストレスもたまりませんからね。ただ私は言いたい。きれいになっているけど、どれだけ削ってどれだけ軽くなったかと心配するのは私だけでしょうか。

この文章は、THE WATCH & JEWELRY TODAY(株式会社 時計美術宝飾新聞社)に2011年1月~11月と2012年3月の12回連載されたものを打ち直したものです。

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