時計の修理とは? No.9-4

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もうひとつの時計は1カ月前にオーバーホールしたばかりだがお客様に渡すと止まりで戻ってしまい3回修理しているといって持ち込まれた時計。この時計はスイスの一般的な中三針のオートマでしたが、裏蓋を開ける前にリューズでゼンマイを巻いてみました。そうするとパッシャパッシャとゼンマイのスリップ音がするのです。これはゼンマイのスリップ調整が不十分で、これでは持続時間が大きく損なわれます。タイミングを見るとパシャという前までのゼンマイを巻いてみましたがテンプの振り角が240度しか振っていませんでした。そのことを話しましたら、販売店の人のようで、自分のところにある測定器でもそうだったとのこと。もう3回目でお客様がご立腹なので直して欲しいと持ち込まれたものです。これから原因を調べますが、このように、ひとつめはケースの構造を知らなかった、ふたつめは多分オーバーホールしただけのように私は見ています。このように私には見えます。今後の時計修理業界はどうなっていくのでしょう。

 

この文章は、THE WATCH & JEWELRY TODAY(株式会社 時計美術宝飾新聞社)に2011年1月~11月と2012年3月の12回連載されたものを打ち直したものです。

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