時計の修理とは? No.10-2

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この時計を修理してみて思うのですが、今の若い修理技術者は本当の修理とは何かが分かっていないのではと思うのですが、どうでしょう。この時計についていえば、まずゼンマイのスリップがどうあるべきか分かっていない。2回再修理で戻ったとき、おそらく機械だけのオーバーホールをしただけで根本的な不具合の追及をしていないからだと思います。今回もケースにセットして5分もすれば振り角が悪いのがわかるのですから。

はじめのオーバーホールでは分からなくても二度目に再修理できたときは注意して見なければいけないと思います。全般的に今の若い技術者は追求心がないように私にはみえます。でも若い人だけの問題でもないと思います。私も含めて先輩たちの責任でもあるように思います。つまり技術の伝承がなされていないと思います。若い技術者にすれば、2年も3年も学校で勉強してきたからもう一人前と思っている人もいるように話を聞きます。私から見れば、やっとこの仕事の世界に片足を入れたぐらいと思うのですが。

 

この文章は、THE WATCH & JEWELRY TODAY(株式会社 時計美術宝飾新聞社)に2011年1月~11月と2012年3月の12回連載されたものを打ち直したものです。

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