時計の修理とは? No.11-3

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少しずつ思い出しながらお話していきます。間違っていないと思いますが、セイコーの鉄道時計で19セイコーではなく腕時計サイズのムーブでキャリバー6110Aというものだったと思います。全員同じ時計なのですが、当然壊され方は同じではないのです。ですからくじ引きで時計を選んだと記憶しています。私の手にした時計は全舞から輪列のガンギ車まで壊れているところはなかったと記憶しています。壊されていたのはアンクル爪石が外れかかっていました。テンプについては天輪から振り座がついたまま、ヒゲ全舞がついたままタガネで外されていました。そのため天輪の天芯の入る穴が歪になっていました。その穴に作った天芯をそのまま合わせるわけにはいきません。そのままセットすると天輪が横ブレしてしまいます。そのような壊され方がされていることは、合格した技術者から聞いていたので段チャックに噛み歪になった穴をバイトで削って直しました。ヒゲ全舞も5、6箇所壊れていたと思います。ヒゲの直しも本当に大変でした。

 

この文章は、THE WATCH & JEWELRY TODAY(株式会社 時計美術宝飾新聞社)に2011年1月~11月と2012年3月の12回連載されたものを打ち直したものです。

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